ソウル宣言

2024年のAIソウルサミットで採択された、人工知能の安全・革新・包摂のための国際宣言。

ソウル宣言

概要

ソウル宣言(Seoul Declaration)は、2024年5月21日に大韓民国ソウルで開催されたAIソウルサミット(AI Seoul Summit)で採択された人工知能(AI)の安全・革新・包摂に関する国際宣言である。英国が主導した2023年のブレッチリー宣言(Bletchley Declaration)の後続の議論であり、AIの急速な発展に対応して各国が共通の安全原則と国際協力体制を整えることを目標とする。大韓民国と英国が共同議長国を務め、30余か国の首脳・閣僚級の人物と主要AI企業、国際機関の代表が参加した。

主な内容

推進の背景

2023年11月に英国のブレッチリーパークで開かれた第1回AI安全サミットで採択されたブレッチリー宣言は、「フロンティアAI(frontier AI)」の潜在的なリスクに対する国際的認識を共有する最初の文書であった。その後、2024年3月に国連総会がAIに関する最初の決議案を満場一致で採択し、後続の議論の必要性が高まり、大韓民国が次回会議の共同主催国を担うことになった。

3大核心原則

ソウル宣言は安全(Safety)、革新(Innovation)、包摂(Inclusivity)をAIガバナンスの三つの軸として提示する。

1. 安全:先端AIモデルのリスクの識別、評価、モニタリングのための国際協力の強化。AI安全研究機関間のネットワーク構築。

2. 革新:安全を阻害しない範囲でAI技術の開発と投資を促進し、スタートアップと研究者に開かれたエコシステムを醸成。

3. 包摂:AI格差(access gap)を縮め、開発途上国の能力強化と人材育成を支援。性別・地域・階層による差別的影響を最小化。

ソウル意向書(Seoul Statement of Intent)

首脳宣言とは別に、各国のAI安全研究機関の代表が署名した「AI安全科学に関する国際協力意向書」が発表された。これはAI安全性評価の方法論、リスク閾値(threshold)、レッドチームテストなどに関する共同研究と情報共有のための機関間協力フレームワークである。米国、英国、日本、フランス、ドイツ、カナダ、オーストラリア、シンガポールなどが参加し、その後「国際AI安全研究所ネットワーク」に発展した。

企業の自発的約束

主要グローバルAI企業も宣言に合わせて自発的な安全の約束を発表した。フロンティアモデル開発企業がリスクマネジメントフレームワークを公開し、モデルリリース前に安全性評価を実施し、事故発生時に透明に公開するという内容が盛り込まれた。

主要参加国・機関

大韓民国、英国、米国、日本、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、オーストラリア、シンガポール、インド、ブラジルなど30余か国と、国連(UN)、経済協力開発機構(OECD)、欧州連合(EU)などの国際機関が参加した。技術企業としては主要ビッグテックとAIスタートアップの代表が出席した。

後続措置

ソウル宣言以降、2025年にフランスのパリで第3回AI行動サミット(AI Action Summit)が開かれ、各国はAI安全研究所間の協力と規制サンドボックス、AI影響評価制度の導入を続けた。ソウルサミットの核心的成果は、「安全」の言説を「革新」および「包摂」と結合した均衡的なフレームを提示し、機関間の実質的な協力チャネルを形成した点にある。

最新動向

2024~2025年に入り、ソウル宣言の後続の議論は三つの方向に展開している。第一に、国際AI安全研究所ネットワークが実質的な共同研究(モデル評価標準、リスクシナリオの共有)を開始した。第二に、各国がAI基本法・規制を制定しながら宣言の原則を国内法に転換する作業が進行中であり、EU AI法の施行と韓国のAI基本法の議論が代表例である。第三に、AIの安全と軍事・安保の課題が結びつき、「AIガバナンス」が外交議題として浮上し、国連・OECDなど多国間の枠組みで後続の規範に関する議論が続いている。ただし、拘束力のある国際規範の不在、先進国と開発途上国間の技術格差、安全保障競争などの限界も指摘される。

関連トピック

  • [[AIソウルサミット]]
  • [[ブレッチリー宣言]]
  • [[人工知能の安全性]]
  • [[AIガバナンス]]
  • [[欧州連合AI法]]