トマホーク

アメリカが開発した代表的な長距離亜音速巡航ミサイルBGM-109の通称で、現代の精密打撃戦を象徴する兵器システムである。

トマホーク

概要

トマホーク(Tomahawk)はアメリカが開発した長距離亜音速巡航ミサイルで、正式な制式名はBGM-109 トマホークである。地上・艦艇・潜水艦など多様なプラットフォームから発射され、数千キロメートル先の標的を精密打撃できる。1991年の湾岸戦争で大量に実戦運用され、現代精密誘導兵器の象徴として位置づけられた。もともとは核弾頭搭載型の戦略巡航ミサイルとして出発したが、冷戦終結後に通常弾頭型が主力となり、アメリカの軍事力投射の中核手段となった。

主要な内容

開発背景

1970年代、アメリカはソ連の防空網を突破できる低高度巡航ミサイルを要求した。1972年にゼネラル・ダイナミクス(現レイセオン系)が開発に着手し、1983年に実戦配備された。TERCOM(地形対照航法)とDSMAC(デジタル場面照合航法)を組み合わせ、GPSなしでも精密航法が可能になるよう設計されたのが特徴である。

諸元および性能

  • 射程: ブロックにより約1,250km(初期型)から1,600~2,500km(改良型)まで拡大
  • 速度: 亜音速(約マッハ0.75)
  • 巡航高度: 30~50m水準の極低高度で侵入
  • 推進: ターボファンエンジン + 固体燃料ブースター
  • 誘導: TERCOM、DSMAC、GPS/INS複合航法
  • 弾頭: 通常の単一/貫通弾頭、子弾散布型、初期にはW80核弾頭

ブロック別の発展

ブロックIは初期型、ブロックIIは射程と弾頭性能を改善した。ブロックIIIはGPS誘導と改良弾頭を適用して精度を大きく高め、ブロックIVは飛行中の目標再指定と再攻撃能力を備えた現代的バージョンである。最新のブロックVは海上移動目標への打撃能力を強化し、対艦攻撃任務まで遂行する。

発射プラットフォーム

トマホークはMk 41垂直発射システム(VLS)を備えたイージス駆逐艦と巡洋艦、タイコンデロガ級巡洋艦、バージニア級攻撃型原子力潜水艦の垂直発射システム、そして過去にはB-52爆撃機などで運用された。地上発射型は2019年のINF条約破棄以降、再び開発が再開された。

実戦運用

1991年の湾岸戦争で約288発が発射されてイラクの防空網を無力化し、1998年の砂漠の狐作戦、1999年のコソボ戦争、2003年のイラク戦争、2011年のリビア作戦、2017~2018年のシリア空爆などで中核的な打撃手段として使用された。敵防空網の外から発射してパイロットの危険を減らす「防空網外郭発射(スタンドオフ)」概念の代表例である。

大韓民国とトマホーク

韓国海軍はイージス駆逐艦(世宗大王級)にトマホーク運用能力を確保し、これを基に独自開発した長距離巡航ミサイル「玄武-3」を運用している。トマホークは韓国型キルチェーン(Kill Chain)システムの参照モデルとしてもしばしば言及される。

最新動向

2024~2025年時点で、アメリカはブロックVとブロックVaを中心に生産を拡大している。ブロックVaは対艦移動目標打撃能力を備え、インド太平洋地域の海上抑止力強化に投入される。また、2019年のINF条約破棄以降、地上発射型「タイフォン(Typhon)」システムにトマホークが統合され、グアムやフィリピンなどへの配備が議論されている。アメリカは年間生産量を数百発水準から1,000発以上に増やす増産計画を推進中であり、オーストラリアや日本など同盟国への輸出と共同生産の協議も活発である。ウクライナ戦争と中東紛争で長距離精密打撃需要が急増したことも増産圧力を高める要因である。一方、ロシア・中国の対巡航ミサイル防空システムの高度化に対応し、低被探知性と電子戦対処能力を強化する改良が並行して進められている。

関連トピック

  • [[巡航ミサイル]]
  • [[玄武-3]]
  • [[イージス駆逐艦]]
  • [[アメリカ海軍]]
  • [[精密誘導兵器]]
  • [[キルチェーン]]