加害者
概要
加害者(加害者、perpetrator)は、他人に身体的・精神的・財産的・社会的被害を与える行為の主体を指す語である。刑事法では犯罪の構成要件に該当する違法行為を行った者を意味し、民事法では不法行為や債務不履行により他人に損害を生じさせた者を意味する。狭義には刑事事件の被疑者・被告人を、広義には学校暴力・職場内ハラスメント・性暴力・家庭内暴力・ヘイト表現など多様な文脈で被害を引き起こした当事者を含む社会的・法的概念である。
主な内容
法的定義と地位
刑事手続において加害者は段階ごとに名称が異なる。捜査段階では被疑者、検察官の公訴提起後は被告人、有罪判決が確定すれば受刑者または犯罪者と呼称される。憲法と刑事訴訟法が定める無罪推定の原則に従い、確定判決前には加害者と断定することはできず、捜査機関と報道機関は人権侵害と名誉毀損を避けるため身元公開に慎重でなければならない。一方、「特定重大犯罪被害者保護法」、「性暴力犯罪の処罰等に関する特例法」、「児童・青少年の性保護に関する法律」などは、一定の要件で加害者の身上情報を公開・告知するよう規定している。
刑事責任の成立要件
刑事責任が成立するには、構成要件該当性、違法性、責任(故意・過失および責任能力)がすべて満たされなければならない。満14歳未満は刑事未成年者(触法少年)として刑罰の代わりに保護処分を受け、満10歳未満は犯罪少年に該当せず、少年保護事件としても処理されない。心神喪失・心神耗弱、強要された行為、正当防衛・緊急避難などは違法性または責任を阻却する事由となる。加害者の類型は単独犯、共同正犯、教唆犯、幇助犯(従犯)に区分され、幇助犯と共犯の区別は量刑に直接的な影響を及ぼす。
民事上の損害賠償責任
民法第750条は、故意または過失により他人に損害を与えた者に損害賠償責任を課す。これとともに使用者責任(第756条)、未成年者の監督者責任(第755条)、工作物の占有者・所有者の責任(第758条)、共同不法行為者間の不真正連帯責任(第760条)などが加害者の責任範囲を拡張する。近年では、故意的・反復的な不法行為に対し実際の損害を超える懲罰的損害賠償を認める特別法が拡大する傾向にあり、加害者が被害回復の努力をしない場合に裁判所が賠償額を加重する判決も増えている。
加害者の類型分類
- 行為態様別: 直接加害者、共同加害者、間接加害者、幇助・教唆加害者
- 関係別: 家庭内暴力・デートDV・児童虐待・高齢者虐待など親密関係の加害者
- 組織・集団別: 学校暴力、職場内ハラスメント、軍隊内暴力、組織暴力、サイバーハラスメント
- 国家・制度的: 国家権力による人権侵害、企業による環境・安全侵害(重大災害)
被害者との関係および二次加害
加害者と被害者の関係は、事件の性格を規定する核心的な変数である。親密関係で発生した暴力は届出率が低く再犯率が高く、被害者が経済的・情緒的に加害者に依存している場合には抜け出しにくい。また、捜査・裁判・報道の過程で被害者の私生活が露出したり、「被害者らしさ」を強要されたりする二次加害が発生することもある。加害者が被害者に接近・連絡する行為そのものを処罰する接近禁止・電子装置装着制度は、このような二次被害を防ぐための装置である。
社会的認識と論争
加害者に対する社会的スティグマは再犯防止に寄与しうるが、社会復帰を遮断してかえって再犯を誘発するという批判も存在する。このため、処罰中心の応報的司法と、被害者・加害者間の対話と賠償を通じて関係を回復する修復的司法との間の緊張が続いている。身上公開・電子足輪・性衝動薬物治療など再犯防止策の実効性と人権侵害の可能性も、持続的な論争の対象である。
最新動向
2024~2025年の最大の変化は、ディープフェイク性犯罪とデジタル性犯罪の加害者問題の浮上である。生成AIを利用した虚偽映像物の製作・流布が急増するにつれ、児童・青少年を対象とした犯罪が増え、政府は関係省庁合同の対応体系を構築し、ディープフェイク性犯罪の処罰規定を強化した。また、オンラインストーキング、報復目的の流布、匿名掲示板を通じた集団ハラスメントが新たな形態の加害様相として定着した。教育権侵害と児童虐待届出の濫用をめぐる教師-保護者の葛藤において、「加害者」の規定をめぐる争いも続いている。制度的には、重大災害処罰法の適用範囲の拡大と処罰強化、ストーキング処罰法の反意思不罰の廃止、触法少年の年齢引き下げ論議、青少年の賭博・麻薬加害者に対する少年保護処分の多様化などが進行中である。国際的には、被害者中心の司法と加害者の教化・再社会化との均衡を図るための修復的司法プログラムが拡大しており、デジタルフォレンジックとAI基盤の追跡技術が加害者の特定に活用される事例も増加している。
関連テーマ
- [[被害者]]
- [[犯罪]]
- [[損害賠償]]
- [[修復的司法]]
- [[ストーキング処罰法]]
- [[無罪推定の原則]]