原子爆弾

ウラン・プルトニウムの核分裂連鎖反応エネルギーを利用した核兵器で、1945年のマンハッタン計画によって実用化された。

原子爆弾

概要

原子爆弾(原子爆彈、atomic bomb)は、ウラン-235やプルトニウム-239のような重い原子核の核分裂連鎖反応で放出される莫大なエネルギーを爆発力として利用する核兵器である。1945年、アメリカのマンハッタン計画を通じて実用化され、同年8月に広島と長崎に投下され、以後、人類の戦争の様相と国際政治秩序、科学技術倫理の議論に決定的な影響を与えた。

主要な内容

物理的原理

原子爆弾のエネルギー源は核分裂である。ウラン-235が中性子を吸収すると不安定な状態となり、二つの娘核に分裂し、この過程で2~3個の中性子と約200 MeVのエネルギーが放出される。放出された中性子が再び別の核を分裂させる連鎖反応が瞬間的に指数関数的に増幅されると爆発が起こる。1キログラムのウラン-235が完全に分裂すると約17キロトンのTNTに相当するエネルギーが発生する。臨界質量を超えなければ反応は維持されないため、爆発直前まで未臨界状態を維持する設計が鍵となる。

爆発方式

  • ガン型(Gun-type): 火薬でウラン塊を別の塊に発射し、臨界質量を超過させる方式である。構造が単純で信頼性が高いが効率が低い。広島に投下された「リトルボーイ」がこの方式である。
  • インプロージョン型(Implosion-type): 球形のプルトニウムコアの周囲に爆薬を配置し、均一に圧縮して密度を高め、臨界状態にする。効率が高く、現代の核兵器の基本構造として定着した。長崎の「ファットマン」がこの方式である。
  • 水素爆弾(熱核兵器): 原子爆弾を起爆装置として重水素・三重水素の核融合を誘導する二次核兵器で、威力は数百キロトンからメガトン級に達する。

構造と構成要素

核分裂物質であるコア、これを圧縮・点火する起爆装置、中性子反射体、爆発の時間を遅延させるタンパーなどで構成される。現代の核弾頭は再突入体、安全装置、起爆制御システムを含む複合体系であり、投擲手段として弾道ミサイル、戦略爆撃機、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)などが用いられる。

開発の歴史: マンハッタン計画

1938年にドイツのオットー・ハーンとフリッツ・シュトラスマンが核分裂を発見し、1939年のアインシュタイン=シラードの手紙を契機にアメリカは1942年にマンハッタン計画を発足させた。ロスアラモス研究所でロバート・オッペンハイマーが理論設計を統括し、1945年7月16日、ニューメキシコ州のトリニティ実験場で人類初の核実験が成功した。

実際の使用と影響

1945年8月6日に広島に「リトルボーイ」(約15キロトン)、8月9日に長崎に「ファットマン」(約21キロトン)が投下された。1945年末までの死者は広島約14万人、長崎約7万人と推定される。急性放射線症候群のほかにも白血病や固形がんなど後発的影響が数十年にわたり続き、被爆者(ヒバクシャ)問題は今日まで続いている。

冷戦と核拡散

1949年にソ連、1952年にイギリス、1960年にフランス、1964年に中国が相次いで核実験に成功し、核競争が深刻化した。1962年のキューバ・ミサイル危機を経て1968年に核拡散防止条約(NPT)が締結され、1996年に包括的核実験禁止条約(CTBT)が採択されたが、発効しないまま残っている。

最新動向

2024~2025年基準で世界の核弾頭は約1万2千発水準と推定され、アメリカとロシアが全体の90%近くを保有している。ロシア・ウクライナ戦争と中東情勢の中で核脅威の議論が再浮上し、ロシアは2024年に核ドクトリンを改正して、非核国家の支援を受けた通常攻撃にも核使用の可能性を示唆した。アメリカはB61-12など戦術核の近代化と次世代ICBM「センチネル」、コロンビア級戦略核潜水艦事業を進めており、中国は2030年までに核弾頭を1,000発以上に増やすと見込まれている。北朝鮮は偵察衛星の発射とともに戦術核搭載手段を拡大し、緊張を続けている。2023年のロシアの新START参加停止以降、米・露の軍縮交渉は膠着状態であり、2025年に入り専門家たちは条約体系の空白と核実験再開の可能性を警告している。一方、核融合エネルギー研究とは異なり、兵器目的の核技術の統制は依然として国際社会最大の難題として残っている。

関連項目

  • [[核分裂]]
  • [[マンハッタン計画]]
  • [[水素爆弾]]
  • [[広島・長崎への原爆投下]]
  • [[核拡散防止条約]]
  • [[冷戦]]