暗殺者(たち)
概要
暗殺者(あんさつしゃ、assassin)とは、特定の人物を秘密裏にかつ突然の方法で殺害する行為者、またはそのような殺害を職業として請け負い実行する者を指す。政治的・宗教的・イデオロギー的目的を帯びる場合が多く、個人の怨恨や金銭的利益のための請負殺人とも重なる。歴史的に暗殺は権力交代の引き金となって戦争や革命を引き起こすこともあり、現代では国家安全保障・国際法・軍事技術の核心的争点へと拡大した。
主要な内容
語源と起源
英語の単語 assassin は、11〜13世紀にペルシアとシリアで活動したニザール派イスマーイール派の急進的分派を指すアラビア語「ハシシン(Hashshashin)」に由来するという説が広く受け入れられている。彼らはハサン・サッバーフの指導の下、アラムート要塞を拠点として政敵排除による政治的抑止戦略を展開し、マルコ・ポーロの旅行記などを通じてヨーロッパに知られ、「暗殺」という概念が定着した。韓国語の「암살」は漢字語 暗殺、すなわち「密かに殺すこと」をそのまま移した語である。
歴史的事例
古代にはローマのユリウス・カエサルが元老院で集団暗殺され、マケドニアのピリッポス2世も側近に殺害された。近代にはエイブラハム・リンカーン(1865)、ジェームズ・ガーフィールド(1881)、ウィリアム・マッキンリー(1901)らアメリカ大統領の連続銃撃と、1914年のサラエボにおけるフランツ・フェルディナント大公狙撃が代表的であり、後者は第一次世界大戦の直接的な引き金となった。韓国近代史では安重根の伊藤博文狙撃(1909)、李奉昌・尹奉吉の義挙(1932)が抗日独立運動の象徴として残っている。現代ではジョン・F・ケネディ(1963)、マーティン・ルーサー・キング(1968)、インディラ・ガンディー(1984)、イツハク・ラビン(1995)、安倍晋三(2022)などが代表的な犠牲者である。
動機と類型
暗殺は動機によって政治的排除、宗教・イデオロギー的制裁、個人的復讐、金銭的請負、国家が実行する標的殺害(targeted killing)に分けられる。手段としては遠距離狙撃、毒殺、爆発物、近接襲撃、車両突入などが用いられ、近年ではドローンや精密誘導兵器、サイバー手段が組み合わされている。暗殺者は単独犯である場合もあるが、組織・国家・非国家武装勢力が背後にいる場合が多く、単純な殺人とは区別される。
法的・倫理的側面
ほとんどの国で暗殺は殺人および共謀殺人として最高刑に処される重大犯罪である。一方、国家が行う標的殺害については、自衛権の正当な行使であるという主張と、主権侵害および司法手続き違反であるという批判が対立している。国際人道法は民間人と戦闘員の区別、比例性、過剰殺傷の禁止を求めており、自律兵器や人工知能による標的選定の責任の所在をめぐる論争も続いている。
大衆文化の中の暗殺者
暗殺者はゲーム・映画・小説において反英雄的キャラクターとしてしばしば登場する。ゲーム『アサシン クリード』シリーズはハシシン教団をモチーフに歴史と架空の暗殺者組織を織り交ぜ、映画『レオン』、『ジョン・ウィック』シリーズ、『ヒットマン』シリーズ、日本の忍者叙事などは職業的殺人者の倫理と孤独を物語化する。これは暴力の美学化という批判とともに、権力に抗する個人の自由という寓話としても読まれる。
最新の動向
2024年は暗殺と政治暴力が再び前面に浮上した年であった。5月にはスロバキアのロベルト・フィツォ首相が撃たれ、7月にはアメリカのペンシルベニア州の遊説会場でドナルド・トランプ前大統領に対する暗殺未遂事件が発生し、警護体制の綻びが議論となった。同じ年、ハマス政治局指導者イスマイル・ハニヤがテヘランで、ヒズボラ指導者ハッサン・ナスララがベイルートでそれぞれ排除され、中東情勢が急速に揺らいだ。
2024〜2025年の特徴は技術の結合である。人工知能に基づく標的識別、衛星・信号情報の融合、小型ドローンと精密打撃資産が、国家単位の「暗殺戦」の効率を高める一方で、誤認殺傷や民間人被害のリスクを増大させている。ロシア・ウクライナ戦争やイスラエル・イラン紛争では、要人暗殺と報復が相互抑止の手段として繰り返されている。また、ソーシャルメディアやディープフェイクを通じた脅迫・扇動、オンラインでの請負殺人の募集など、新たな形態のリスクが登場し、各国は要人警護の強化と異常兆候の事前探知技術に投資している。暗殺未遂事件の刑事責任や、国家が背後で関与した行為の国際法的責任を問う裁判・調査も並行して行われている。
関連項目
- [[暗殺]]
- [[テロリズム]]
- [[アサシン クリード]]
- [[標的殺害]]
- [[狙撃手]]
- [[政治暴力]]