火星
概要
火星(かせい、Mars)は太陽系の第4惑星で、太陽から平均約2億2,800万km離れている。表面に酸化鉄(錆びた鉄)成分が多いため赤く見えることから「赤い惑星(Red Planet)」と呼ばれる。地球と似た自転周期、季節、極冠、過去の水の痕跡などから、太陽系で生命存在の可能性が最も高い惑星であり、人類の有人探査の第1候補とされる。
主な内容
物理的特性
火星の赤道半径は約3,396 kmで地球の約半分の水準であり、質量は地球の約10.7%にすぎない。平均密度は3.93 g/cm³で地球(5.51 g/cm³)より低く、比較的軽い物質で構成されていることがわかる。自転周期は24時間37分で地球と非常に似ているため、「ソル(Sol)」という独自の時間単位を用いる。公転周期は約687日で、自転軸傾斜角が25.2度と地球(23.4度)に似ているため季節変化が存在する。ただし公転軌道の離心率が0.093と大きいため、季節ごとの気温差は地球よりはるかに極端である。
大気と気候
火星の大気は二酸化炭素が95%以上を占め、窒素約2.8%、アルゴン約2%、酸素0.13%程度が含まれている。気圧は地球の約0.6%水準で極度に希薄なため、液体状態の水が表面に長く存在しにくい。平均表面温度は約−63°Cで、赤道地域は昼に20°Cまで上がることもあるが、夜には−90°C以下に下がる。毎年冬になると二酸化炭素が極地方で凍りついて極冠が拡大し、春になると再び昇華する「二酸化炭素循環」が起こる。大気中では地球では見られない巨大な塵嵐が数週間から数か月にわたり惑星全体を覆うこともある。
地質と地形
火星は太陽系で最も劇的な地形をもつ惑星である。代表例として高さ約22 kmに達する太陽系最大の火山であるオリンポス・モンス(Olympus Mons)と、長さ4,000 km以上続く巨大峡谷バレス・マリネリス(Valles Marineris)がある。南半球は高度が高くクレーターが多い一方、北半球は低く平坦な地形で構成されており、これを「火星の二分性(Martian dichotomy)」と呼ぶ。探査機たちは過去の河川・三角州・湖の痕跡や粘土鉱物、硫酸塩などを発見しており、これは初期火星に液体状態の水が豊富だったことを強く示唆する。極地方には水氷と二酸化炭素氷が混ざった極冠が存在し、地下には相当量の水氷が埋蔵されていると推定される。
衛星
火星にはフォボス(Phobos)とダイモス(Deimos)という二つの小さな衛星がある。二つの衛星はいずれも不規則なジャガイモ形で、捕獲された小惑星と考えられている。フォボスは火星に非常に近く(平均距離約9,378 km)、徐々に火星へ近づいているため、数千万年後には潮汐力によって破壊されるか衝突すると予測されている。
探査の歴史
火星探査は1960年代のソ連のマルス計画と米国のマリナー計画で本格化した。1965年、マリナー4号が初めて火星の近接写真を送信し、1976年にはバイキング1・2号が初めて火星表面に着陸して生命探査実験を行った。その後、ソジャーナ(1997)、スピリット・オポチュニティ(2004)、キュリオシティ(2012)、パーサヴィアランス(2021)などのローバーが相次いで着陸し、地質分析、有機物探索、試料採取を進めた。インサイトは火星の地震(火星地震)を観測し、内部構造研究の基盤を築き、多数の周回機が地表・大気・地下を常時観測している。
生命存在の可能性
火星の生命探査は「現在生存する生命」と「過去の生命の痕跡」の二つの方向で進められる。メタン濃度の季節的変動、地下の液体水存在の可能性、粘土鉱物が豊富な堆積層などは生命探査の核心的標的である。ただし表面は強い紫外線と放射線、極限的な乾燥環境のため生命が生きるには非常に過酷であり、学界は地下深部や過去の堆積環境に注目している。
最新動向
2024~2025年の火星探査の核心キーワードは試料帰還(Sample Return)と有人探査準備である。NASAのパーサヴィアランス・ローバーはジェゼロ・クレーターで岩石コア試料を採取してチューブに保管中であり、これを地球に持ち帰るための「火星試料帰還(Mars Sample Return, MSR)」ミッションは予算超過と日程遅延の問題から構造再設計が議論されている。中国は2028年打ち上げを目標に天問三号(天問三號)試料帰還ミッションを推進しており、火星圏での初の試料帰還競争が加熱している。
民間宇宙企業の参加も加速している。スペースXはスターシップを用いた火星貨物・有人輸送計画を継続的に発表しており、2026年以降の無人スターシップの火星到着を目標に試験飛行を続けている。各国は火星基地建設のための現地資源活用(ISRU)技術、たとえば火星大気の二酸化炭素からメタンと酸素を生産する技術、地下の水氷採掘、3Dプリンティング建築技術などを研究している。また人工知能ベースの自律走行・資源探査技術が次世代ローバーの中核要素として浮上しており、火星衛星フォボス探査(日本のMMXミッションなど)も再注目されている。
国際協力の面では、有人火星探査時の放射線遮蔽、長期無重力適応、心理・医学的問題など人体リスク管理が最大の難題とされ、これを解決するための国際宇宙ステーションおよび月ゲートウェイ基盤研究が並行して進められている。
関連トピック
- [[太陽系]]
- [[火星探査]]
- [[パーサヴィアランス]]
- [[スペースX]]
- [[宇宙開発]]
- [[生命存在の可能性]]