籠城
概要
籠城(농성)は、特定の施設や空間を占拠した後、一定期間その場に留まり要求を貫徹しようとする集団的直接行動である。もともとは城に入り外部の攻撃を防ぐ軍事用語であったが、現代では労働組合の争議行為、学生・市民運動、政治的抗議の手段として広く用いられる。集会・デモと異なり「留まること」と「空間の占拠」を本質とするため、表現の自由と財産権・公共の秩序が正面から衝突する地点を生み出す。
主要な内容
語源と概念
漢字の籠(かご、囲い込む)と城(しろ)が結合した語で、「城を囲んで立てこもり守る」という意味である。英語圏では占拠の形態に応じて sit-in(座り込み)、sit-down strike(工場占拠ストライキ)、occupation(空間占拠)などと呼び分ける。韓国では日本統治時代と1960~70年代の労働運動を経て、「籠城」という表現が抗議的な占拠全般を指す普通名詞として定着した。
類型
- 工場・事業場占拠籠城: 操業を停止させ、解雇撤回・団体協約締結を要求する伝統的な労働争議の形態。
- 建物占拠籠城: 大学本館、放送局、国会周辺の建物など象徴性の高い施設を占拠する方式。
- 高所籠城: 煙突・鉄塔・クレーンなどの高所作業台に上り、飛び降りを示唆しながら世論の関心を引く形態で、救助活動の費用と安全問題も併せて提起される。
- 屋上・道路・広場籠城: 移動と滞在を組み合わせ、交通と日常生活を麻痺させて圧力を高める方式。
- ハンガーストライキ・断髪並行籠城: 身体的自己犠牲を組み合わせ、道徳的正当性を強調する変形。
法的地位
大韓民国憲法第21条は集会・結社の自由を保障するが、籠城は建造物侵入(刑法第319条)、業務妨害(刑法第314条)、「集会及び示威に関する法律」上の占拠禁止・解散命令条項としばしば衝突する。労働争議としての占拠は、労働組合法上の争議行為の正当性要件(目的の正当性、手続の適法性、手段の相当性)によって違法性の有無が分かれる。判例は「平和的で象徴的な占拠」と「生産施設の全面的掌握」を区別し、正当性判断を異ならせてきたし、使用者は占拠禁止仮処分と損害賠償請求で対応する場合が多い。
歴史的事例
1970年の全泰壱(전태일)による平和市場の労働現実告発、1979年のYH貿易新民主党中央党舎籠城、1980年代の九老洞・蔚山労働者大闘争、1987年6月抗争、2009年の双竜自動車平沢工場長期占拠、2010年代の韓進重工業・非正規職事業場闘争、2022年の貨物連帯総ストライキなどが代表的である。海外では1960年の米国グリーンズボロ食堂 sit-in、インドのガンディーによる非暴力不服従、フランスの工場占拠ストライキがしばしば引用される。
社会的論争
籠城は少数にも発言権を与える強力な手段であるが、施設所有者の財産権と利用者の便益を侵害し、長期化すれば公権力投入の比例性問題を生む。一方で、占拠がなければ声が制度圏に届きにくいという点から、「最後の手段」としての正当性を認めるべきだという主張も対立している。
最新動向
2024~2025年の籠城は、形態と舞台が急速に変化している。第一に、気候・環境団体が道路や空港滑走路を占拠する「交通麻痺型」抗議が欧州を中心に拡散し、処罰強化の議論につながった。第二に、2024年に米国の大学街でガザ地区連帯のテント籠城が相次いで設置され、大学当局による強制解散と表現の自由論争が再燃した。第三に、韓国では医療界の集団行動や労働・政治の懸案をめぐる長期籠城が続き、「長期戦化」の様相が顕著になり、参加者らは生中継・SNSのリアルタイム共有で世論戦を並行している。第四に、裁判所による占拠禁止仮処分の認容が増え、警察の解散執行基準が厳格化する中で、主催側は「最小占拠・最大拡散」戦略や夜間・週末の時間帯選択など、法的リスクを減らす方式で対応している。最後に、籠城の正当性判断において気候・住居・ケアなど「新しい社会権」の議題が争点として浮上している。
関連テーマ
- [[集会及び示威に関する法律]]
- [[争議行為]]
- [[労働組合]]
- [[市民的不服従]]
- [[表現の自由]]