統合交戦能力

陸・海・空軍および複数領域の戦力がネットワークで連結され、探知から打撃までを統合的に遂行する軍事能力

統合交戦能力

概要

統合交戦能力(合同 交戦 能力、Joint Engagement Capability)とは、陸軍・海軍・空軍・海兵隊など異なる軍種と複数領域(ドメイン)の戦力が単一のネットワークで連結され、目標の探知、識別、追跡、決心、打撃、評価という全過程を統合的に遂行する軍事能力を指す。単一戦力のセンサーと武装だけでは対応が難しい高速・機動・飽和攻撃の脅威に対抗するため、分散したセンサーと射手がリアルタイムでデータを共有することで、「一人が見て全員が撃てる」交戦体系を実現することが核心である。現代戦において統合交戦能力は、単なる火力の総和ではなく、ネットワークと指揮統制体系が生み出すシナジーそのものとして評価される。

主要な内容

概念と定義

統合交戦能力は大きく二つの層で理解される。第一は狭義の「協同交戦能力」(CEC、Cooperative Engagement Capability)で、米海軍が開発した艦船-艦船、艦船-航空機間のリアルタイム目標データ共有体系を指す。第二は広義の統合交戦能力で、複数の軍と複数の領域を包括する統合交戦概念である。狭義のCECは統合交戦能力の技術的原型であり代表的事例で、A艦のレーダーが探知した目標を、B艦が自らのレーダーに捕捉されていない状態でも迎撃できるようにする。

構成要素

統合交戦能力は概ね以下の要素の結合として説明される。

  • センサー融合:レーダー、ソナー、電子光学(EO/IR)、信号情報(SIGINT)、衛星、無人機など異種センサーのデータを一つの戦場状況図に統合する。
  • 指揮統制(C2)体系:探知-判断-決心-行動(OODA)ループを圧縮する自動化された指揮決心支援体系が要求される。
  • データリンク:Link-16、Link-22、CDL、戦術データリンクなど異種リンク間の相互運用性と低遅延・高信頼通信が前提となる。
  • 統合火力統制:艦船・航空機・地上発射台・無人体系の武装を統合的に割り当て、交戦順序と優先順位を最適化する。
  • 交戦規則(ROE)と決心権限:技術的な接続だけでは不十分であり、誰がいつ発射権限を持つかについての制度的合意が必須である。

代表的な体系と事例

米海軍のCECはAN/USG-2、AN/USG-3などの端末を通じて艦船とE-2D早期警戒機の間で目標データを共有し、これにより艦隊防空能力を大きく向上させた。米軍はこれに統合全領域指揮統制(JADC2)、連合統合全領域指揮統制(CJADC2)の概念を重ね、陸・海・空・宇宙・サイバー戦力を一つの交戦ネットワークに束ねる作業を推進している。韓国軍もまた、海軍の駆逐艦戦闘体系、空軍の韓国型戦闘機(KF-21)と早期警戒機、陸軍の戦術情報通信体系(TICN)および軍事衛星通信体系を連動させる方向で統合交戦能力を拡充している。

戦略的含意

統合交戦能力は単なる兵器性能競争を超え、抑止力の質を左右する。センサー-射手分離構造が完成すれば、個別プラットフォームが失われてもネットワーク全体の交戦能力が維持されるため、敵の立場では「どこを先に無力化すべきか」の判断が難しくなる。逆にネットワーク自体が単一障害点(single point of failure)となり得るため、電子戦(EW)やサイバー攻撃に対する防御とバックアップ体系が必然的に伴う。

最新動向

2024~2025年の流れは「プラットフォーム中心」から「ネットワーク・ソフトウェア中心」への移動として要約される。米国はCJADC2の初期最小実現能力(Minimum Viable Capability)を連合レベルで稼働させる段階へ進み、人工知能基盤の目標識別と自動化された交戦推薦体系が実験から実戦配置の議論へ移りつつある。ウクライナ戦争と中東紛争で露呈したドローン飽和攻撃、衛星航法妨害、商用衛星・通信インフラの戦場活用は、統合交戦能力の範囲を宇宙・サイバー・電磁領域まで拡張させた。

韓国は国防革新4.0と3軸体系(Kill Chain、韓国型ミサイル防衛、韓国型大量懲罰報復)の高度化、戦時作戦統制権転換の準備と相まって、統合交戦能力の検証に速度を上げている。特に国防科学研究所(ADD)と防衛事業庁を中心としたAI基盤の指揮決心支援、有人・無人複合体系(MUM-T)、衛星基盤の監視偵察および超小型衛星群の構築が核心課題として浮上した。2025年基準では、異種データリンク間の連動、韓米連合交戦データの標準化、交戦規則の自動化範囲の設定が主要な争点として浮上している。

同時に課題も明確である。軍ごとに異なるデータ規格と取得体系、閉鎖的なソフトウェア構造、人的運用の未熟などが依然として障害として指摘される。また、自律交戦の倫理・法的責任の問題、誤認交戦防止のための人間関与(human-in-the-loop)原則の定立も併せて求められている。

関連テーマ

  • [[CJADC2]]
  • [[協同交戦能力]]
  • [[国防革新4.0]]
  • [[3軸体系]]
  • [[戦時作戦統制権]]
  • [[有人・無人複合体系]]
  • [[データリンク]]