虚偽

事実に適合しない陳述・記載・表示を意味し、虚偽事実の流布・公文書偽造・虚偽申告など様々な犯罪の構成要件となる概念

虚偽

概要

虚偽(きょぎ、허위)は事実と異なる、あるいは真実でないことを意味し、客観的事実に適合しない陳述・記載・表示を総称する概念である。単なる錯誤や誇張と異なり、虚偽は認識主体が真実でないことを知り、または知り得る状態で非真実を表示する場合を指す。法領域では、虚偽事実の流布、虚偽公文書作成、虚偽申告などがそれぞれ独立した犯罪の構成要件となり、近年はフェイクニュース・ディープフェイク・AI生成コンテンツなど情報環境全般へと規律の範囲が拡大している。

主要な内容

1. 語源と概念の区分

虚偽は漢字の虛(むなしい)と僞(いつわり)の結合語で、「空っぽの偽り」という意味を込めている。対義語としては真実、事実がある。実務では類似概念との区分が重要であり、虚偽は主に「内容の真実性」の問題を扱い、偽造は文書・通貨など対象物の真正性の問題、捏造は存在しない事実を新たに作り出す行為、詐称は資格や身分を偽る行為を意味する。したがって「虚偽事実を捏造して偽造文書を行使した」のように、一つの事案で複数の概念が重複し得る。

2. 法律上の主要類型

ア. 虚偽事実の摘示による名誉毀損

刑法第307条第2項は「公然と虚偽の事実を摘示して人の名誉を毀損した者」を5年以下の懲役もしくは10年以下の資格停止または1千万ウォン以下の罰金に処する。第1項(事実の摘示)より法定刑が重い点が特徴である。情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律第70条第2項も、誹謗目的の虚偽事実流布を別途処罰する。刑法第310条は真実な事実であって専ら公益に関するとき違法性を阻却するが、虚偽事実には原則として適用されない。

イ. 公職選挙法上の虚偽事実公表罪

公職選挙法第250条は、当選または落選を目的として候補者・選挙運動等に関し虚偽の事実を公表・掲示する行為を処罰する。学歴・経歴・財産・前科など候補者情報に関する虚偽公表が代表例であり、報道・SNS・遊説など媒体を問わず成立する。

ウ. 虚偽公文書の作成及び行使

刑法第227条は公務員が職務に関して虚偽の文書を作成する行為を、第228条はその虚偽文書を行使する行為を処罰する。公文書の真正性は公的信頼の基礎であるため、内容の真実性だけでなく作成権限や形式も併せて問題となる。

エ. その他

  • 偽計による公務執行妨害: 虚偽の申告で警察力を浪費させた場合に成立し得る。
  • 虚偽の診断書・検案書の作成(刑法第233条)、虚偽広告(表示・広告の公正化に関する法律)、虚偽の債権に基づく訴訟(訴権濫用)なども虚偽の概念が問題となる領域である。

3. 判例上の争点

最も先鋭な争点は「虚偽」と「意見・評価・誇張」の区別である。判例は事実の摘示と意見の表明を区別し、全体的な文脈・用いられた表現・社会的通念を総合して判断する。特に公職選挙法上の虚偽事実公表罪では「行為者が虚偽であることを認識したか」「公表時点が選挙運動期間か」「当選目的があったか」が実質的争点となる。名誉毀損事件では検察が虚偽性と特定性・公然性を立証しなければならず、被告人は真実性と公益性を抗弁として掲げる。

4. 情報環境と虚偽情報

デジタル時代の虚偽は「虚偽情報(disinformation)」という概念へ拡張された。意図的な虚偽情報(disinformation)と意図なき誤情報(misinformation)を区別し、ファクトチェック・ジャーナリズムとメディアリテラシー教育が対応手段として定着した。アルゴリズム推薦とSNSの拡散構造は虚偽情報の到達範囲を飛躍的に広げ、これは表現の自由と規制の限界という憲法的論争へとつながる。

最新動向

2024年にはテレグラムのディープフェイク性的搾取物事件を契機に、虚偽映像物の製作・頒布を狙った性暴力処罰法改正が行われ、処罰が大幅に強化された。2025年には生成AIが作った虚偽のイメージ・音声・映像が選挙と世論形成に介入し得るという懸念が高まり、AI生成物の表示義務とウォーターマーク義務化を盛り込んだAI基本法の議論が本格化した。プラットフォーム企業の自主規制と国家規制の間の均衡、そして虚偽情報規制が表現の自由を過度に萎縮させないようにするいわゆる「リスクベース規制」アプローチが主要な争点として浮上した。あわせて公職選挙法上の虚偽事実公表罪の適用範囲をめぐる大法院判決が相次ぎ、政治的表現の自由と選挙の公正性の間の境界設定が引き続き再調整されている。実務ではファクトチェック機関と放送通信審議委員会の審議、各プラットフォームの虚偽情報通報体系が相互補完的に運営される傾向にある。

関連テーマ

  • [[名誉毀損]]
  • [[フェイクニュース]]
  • [[ディープフェイク]]
  • [[公職選挙法]]
  • [[偽計公務執行妨害]]
  • [[表現の自由]]