AGM-183 ARRW

アメリカ空軍が開発した空中発射型極超音速ミサイルで、ブースト-グライド方式の試作プログラム

AGM-183 ARRW

概要

AGM-183 ARRW(Air-Launched Rapid Response Weapon)は、アメリカ空軍がロッキード・マーティン(록히드 마틴)とともに開発した空中発射型極超音速ミサイルである。ブースト-グライド方式によりマッハ5以上の速度で敵の中核施設を迅速に打撃することを目標とし、2010年代後半から開発が進められた。数回の試験で成功と失敗を繰り返し、2024年以降、アメリカ空軍の極超音速兵器取得戦略の変化の中でプログラムの位置づけが調整された。

主な内容

開発の背景

アメリカは2010年代半ばから、中国とロシアの極超音速兵器開発に対抗するため、迅速な打撃能力を確保しようとした。ARRWは「迅速対応兵器」という名称のとおり、紛争初期に敵の高価値目標を短時間で排除する概念として企画された。特にインド太平洋地域における抑止力の強化を目指し、従来の通常ミサイルよりも速い応答時間と生存性を提供することを目標とした。

技術的特徴

ARRWは固体ロケットブースターと極超音速グライド飛行体で構成される。ブースターがミサイルを高度まで引き上げた後、グライド飛行体が分離し、大気圏上層を滑空しながらマッハ5以上の速度で機動する。射程は約1,600km以上と推定され、B-52H爆撃機やF-15E戦闘機などから発射できる。精密誘導方式と終末機動能力により、敵の防空網を回避できるという長所がある。これはスクラムジェットエンジンを使用する巡航型極超音速ミサイル(HACM)とは区別されるブースト-グライド体系の代表例である。

開発および試験の過程

2018年にロッキード・マーティンが開発契約を受注した後、2021年から2022年にかけて複数回の試験が行われた。2022年12月には最初の全構成試験(all-up round test)で成功を収め、可能性を立証した。しかし2023年3月の試験では失敗が発生し、プログラムの不確実性を高めた。アメリカ空軍は2024会計年度予算要求でARRWの量産予算を大幅に削除し、研究開発および試験評価の予算のみ一部を維持した。

意義と限界

ARRWはアメリカが開発した最初の空中発射型極超音速兵器の一つとして、関連技術と試験インフラを蓄積することに寄与した。しかし高い単価、複雑な技術、繰り返された試験失敗により、実戦配備には至らなかった。また、より柔軟な運用が可能なHACMなどの代替プログラムの台頭により、戦略的優先順位から押し出された。

最新動向

2024年以降、アメリカ空軍はARRWの追加取得を事実上中止し、極超音速攻撃巡航ミサイル(HACM)のような代替に注力している。ARRWは2023年末までに複数回の飛行試験を通じてデータを蓄積したが、2024年の予算案で量産計画が白紙化され、プログラムは事実上の終了手続きを踏んだ。ただし一部の試験インフラと技術は次世代極超音速兵器の開発に転用されている。2025年現在、アメリカは中国とロシアの極超音速脅威に対応するため、多様な極超音速プログラムを並行して推進しており、ARRWは「技術実証」の事例として評価されている。韓国をはじめとする同盟国との極超音速技術協力の議論にも間接的な影響を与えている。

関連トピック

  • [[極超音速兵器]]
  • [[アメリカ空軍]]
  • [[ロッキード・マーティン]]
  • [[HACM]]
  • [[中国の極超音速ミサイル]]