CLARITY Act

アメリカ下院を通過したデジタル資産市場構造規制法案で、SECとCFTCの管轄を分ける連邦フレームワークを提示する。

CLARITY Act

概要

CLARITY Act(クラリティ・アクト)は、正式名称 Digital Asset Market Clarity Act of 2025(デジタル資産市場明確化法)で、アメリカ連邦レベルで暗号通貨・デジタル資産市場の規制管轄を明確にするために発議された法案である。2025年7月17日にアメリカ下院で294対134で可決され、証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)の間で長く論争となってきた「デジタル資産は証券か商品か」という問いに立法的な答えを提示することを目標としている。韓国をはじめ主要国の規制当局もこの法案の行方を自国の立法の参考基準として注視している。

主な内容

推進の背景

2020年代に入り、リップル(XRP)、ソラナ(SOL)など主要トークンに対するSECの証券性判断をめぐる訴訟が相次ぎ、アメリカ国内のデジタル資産事業者はどの機関の規制を受けるのかすら予測しにくい状態に置かれた。いわゆる「執行による規制(regulation by enforcement)」への業界・議会の反発が強まり、2024年に下院を通過したFIT21(Financial Innovation and Technology for the 21st Century Act)の議論を受け継ぎ、より精緻な市場構造法案へと発展したものがCLARITY Actである。

核心概念:デジタル商品とデジタル証券の区別

法案の中心軸は、デジタル資産をデジタル商品(digital commodity)とデジタル証券(digital security)に分け、その判断基準を成文化することにある。特定のブロックチェーンネットワークが十分に分散化されており、発行主体に対する投資家の期待収益が当該ネットワークの機能的利用によって決まるのであれば、デジタル商品に分類されCFTCの管轄に入る。反対に、発行主体の経営努力に収益が依存する伝統的な投資契約の性格が強ければ、証券とみなされSECの管轄に残る。

管轄の配分:CFTCとSEC

  • CFTC:現物デジタル商品市場に対する排他的管轄権を持ち、取引所・ブローカー・ディーラーに対する登録及び監督権限を行使する。
  • SEC:証券性資産の発行・流通・開示規制を引き続き担当するが、分散化が進んだ資産が商品へ転換し得る経路を認める。
  • 両機関間の管轄衝突を調整するための共同規則制定及び情報共有手続きが明記される。

登録・開示及び事業者の義務

デジタル商品を取り扱う取引所、ブローカー・ディーラー、保管業者はCFTCに登録し、顧客資産の分別保管、利益相反の防止、市場操作の禁止などの義務を遵守しなければならない。プロジェクト側には初期開示と定期報告の義務が課され、一定の要件を満たせば開示負担を緩和する「成熟段階」移行条項が含まれる。

消費者保護と預託・受託

顧客資産の分別保管、破産時の優先弁済、インサイダー取引及び相場操縦の禁止、分散型金融(DeFi)プロトコルへの段階的適用などが主要な争点として扱われる。

名称上の混同

「Clarity Act」という名称は、2000年にカナダで制定されたClarity Act(ケベック分離独立交渉の要件を規定した連邦法)と同一である。文脈上カナダの法律を指す場合もあるため、デジタル資産の議論ではしばしば「Digital Asset Market Clarity Act」と正式名称を併記する。

最新の動向

2024-2025年のアメリカ議会は、デジタル資産立法を三つの軸に分けて推進した。第一はステーブルコイン決済規制を扱うGENIUS Act、第二は市場構造を規律するCLARITY Act、第三は中央銀行デジタル通貨(CBDC)制限の議論である。GENIUS Actが2025年半ばに署名・制定の段階に至ったのに対し、CLARITY Actは下院通過以降、上院で超党派の交渉が進行中であり、上院銀行委員会と農業委員会がそれぞれ証券部分と商品部分を分担して審査する構図が形成された。争点は(1)デジタル商品判定基準の客観性、(2)SECの遡及的取締権限の範囲、(3)DeFi・ステーキング・自己保管ウォレットへの適用の有無、(4)州単位の送金業ライセンスとの先占(preemption)問題である。業界は法案通過によりアメリカ国内の取引所上場手続きが簡素化され、機関資金の流入が拡大すると期待する一方、消費者保護団体は分散化の例外条項が規制回避の通路になり得ると懸念する。韓国・EU・日本などはそれぞれ仮想資産利用者保護法、MiCA、資金決済法改正を通じて対応体系を整えており、アメリカ法案の管轄配分方式が国際標準の議論(FSB、IOSCO)に影響を与えると予想される。

関連項目

  • [[FIT21]]
  • [[GENIUS Act]]
  • [[証券取引委員会]]
  • [[商品先物取引委員会]]
  • [[ステーブルコイン]]
  • [[仮想資産利用者保護法]]
  • [[MiCA]]
  • [[デジタル資産]]