CPTPP
概要
CPTPP(包括的かつ進歩的な環太平洋パートナーシップ協定、Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership)は、2018年3月にチリのサンティアゴで11か国が署名し、同年12月30日に発効した多国間自由貿易協定(FTA)である。米国が離脱した環太平洋経済連携協定(TPP)の残る11か国が、米国の要求条項の一部を停止(suspended)したまま再構成した協定であり、関税撤廃にとどまらず、サービス・投資・知的財産・労働・環境・デジタル通商規範まで包括する「21世紀型の高水準貿易協定」と評価されている。
主な内容
交渉の経緯と発足
- 2005年のTPP(シンガポール・チリ・ニュージーランド・ブルネイの4か国)から出発
- 2008年に米国が参加を表明、2016年2月に12か国が署名(ニュージーランド・オークランド)
- 2017年1月、トランプ政権が米国の離脱を通告
- 2018年3月8日に11か国が署名、2018年12月30日に発効
加盟国
原加盟国はオーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムの11か国である。2023年7月に英国の加入議定書が署名され、2024年12月15日に発効したことで12か国体制となった。
主な規範
- 関税撤廃: 加盟国間貿易の95%以上に対する関税を段階的に撤廃。日本の一部農産物など例外が存在
- 原産地規則: 域内付加価値基準と累積規定を通じて域内サプライチェーンの統合を促進
- サービス・投資: ネガティブリスト方式の開放、投資家対国家の紛争解決(ISDS)手続きを含む
- 知的財産: 著作権保護期間の延長、医薬品データの独占などに関する規定(一部留保)
- デジタル通商: 電子商取引、データの国境を越えた移動、ソースコードの保護など
- 労働・環境: ILO中核条約の履行、環境保護義務の規定
- 国有企業: 競争中立性の規律(マレーシア・ベトナムなど一部留保)
- 政府調達・競争政策・協力: 透明性と能力強化の条項を含む
米国離脱により停止された条項
米国の要求で挿入されていた医薬品の知的財産、投資関連の一部、文化例外など22の条項が停止状態のまま残っている。これは将来米国が復帰した場合に再活性化され得る余地として解釈されることもある。
加入手続きと拡大
新規加入には既存加盟国の全会一致の同意とワーキンググループの審査を経る必要がある。英国は2021年2月に申請後、2023年3月に交渉妥結、2023年7月に署名、2024年12月15日に発効した。中国(2021年9月)、台湾(2021年9月)、エクアドル、コスタリカ、ウルグアイ、ウクライナなどが加入を申請している状態である。
韓国の争点
韓国は2021年12月に政府が加入推進方針を公式化したが、2024年現在まで加入していない。主な争点は、①農産物・水産物の追加開放に伴う国内産業への影響、②日本との実質的なFTA効果および水産物輸入問題、③ISDSによる政策の自律性侵害の懸念、④労働・環境規範の履行負担などである。政府は影響分析と社会的議論、国会の批准手続きを並行して進める課題を抱えている。
最新動向
- 英国の加入発効(2024年12月15日): 12か国体制の発足により、名目GDP基準で世界GDPの約15%規模のブロックが形成された。英国政府は加入により長期GDPが約0.08%追加成長すると推定した。
- 中国の加入審査をめぐる論争: 2024年にカナダのバンクーバーで開かれたCPTPP委員会で中国の加入申請審査の問題が議論されたが、オーストラリア・マレーシアなどとカナダ・メキシコなどとの間の意見の相違が続いている。
- 通商環境の変化: 米国の関税政策強化とWTO機能の弱体化の中で、CPTPPが代替的な通商プラットフォームとして浮上しており、デジタル通商規範の標準としての役割も拡大する傾向にある。
- 韓国での議論再燃: 2025年に入り、加入の必要性と農水産業の補完対策、国会での議論の並行実施の必要性が再び浮上している。
関連トピック
- [[TPP]]
- [[自由貿易協定]]
- [[RCEP]]
- [[世界貿易機関]]
- [[通商政策]]