アラスカLNG

ノーススロープの天然ガスを800マイルのパイプラインで南部へ輸送し、液化・輸出するアラスカの超大型エネルギーインフラ事業

アラスカLNG

概要

アラスカLNG(Alaska LNG)は、米国アラスカ州ノーススロープ(North Slope)で生産される天然ガスを、約800マイル(約1,300km)の大型パイプラインで南部のキナイ半島(Kenai Peninsula)のニキスキ(Nikiski)まで輸送した後、液化プラントで液化天然ガス(LNG)に加工し、アジア市場へ輸出する超大型エネルギーインフラプロジェクトである。総事業費が400億ドルを超えると推定される世界最大級の未開発ガス田開発・輸出事業であり、アラスカ州政府傘下の公企業であるAGDC(Alaska Gasline Development Corporation)が事業主体として参画してきた。

主な内容

推進の背景

アラスカは米国内でも屈指の天然ガス賦存地域である。ノーススロープのプルドーベイ(Prudhoe Bay)やポイント・トムソン(Point Thomson)などには、数十兆立方フィート(Tcf)規模のガスが埋蔵されていると評価されている。しかし、原油生産の過程で産出されるガスは大部分が再び地層に再注入されたり、現地の発電・設備燃料として消費されてきたほか、これを商業的に活用するインフラがなかった。

歴史的にアラスカは、1969年にキナイLNGプラントを通じて日本へLNGを輸出した、米国初のLNG輸出国・地域であった。このプラントは2015年前後に操業を停止し、その後アラスカはノーススロープのガスを本格的に輸出するための大型プロジェクトを模索することになる。2007年、アラスカ州は「アラスカ・ガスライン優遇法(AGIA)」を制定して民間企業のパイプライン建設を誘導し、その後、州政府主導方式へと事業構造が再編された。

事業構造

  • パイプライン: ノーススロープからアラスカ全土を南北に貫き、ニキスキまで至る約800マイル、直径42インチ級のガス管。
  • 液化プラント: ニキスキ地区に建設予定の液化・貯蔵・輸出ターミナルで、最大年産2,000万トン(20 MTPA)規模が当初の構想であった。
  • ガス供給源: プルドーベイ、ポイント・トムソンなどノーススロープ油田の随伴ガスおよび非随伴ガス田。
  • 事業主体: AGDCが主導し、一時はエクソンモービル・BP・コノコフィリップスが権益を保有していたが、2016年以降AGDCへ権益が移転された。

推進の経緯

2013年頃、エクソンモービル、BP、コノコフィリップスが参加するコンソーシアムの形で本格化し、2020年には米国連邦エネルギー規制委員会(FERC)が事業を承認し、米国エネルギー省(DOE)が非FTA諸国向け輸出許可を付与した。ただし、建設費の急騰や長期購入者確保の難航により、事業は何度も遅延した。

採算性と課題

最大の障害は、圧倒的な資本コストである。当初推定400億〜650億ドル水準の投資費は、単一プロジェクトとしては世界最大規模に属し、北極圏の永久凍土地帯を通過するパイプライン建設、極限の気候、環境・先住民との協議、連邦・州の許認可手続きなどが複合的に負担を大きくする。また、カタール、米国メキシコ湾岸、オーストラリアなど既存・新規のLNG供給国との価格競争で優位を確保するには、20年以上の長期販売契約が不可欠である。

最新の動向

2024〜2025年に入り、アラスカLNGは再び国際的な注目を集めている。2025年、AGDCは米国のエネルギーインフラ投資会社であるグレンファーン・グループ(Glenfarne Group)と協力契約を締結し、グレンファーンが事業権益の約75%を取得して開発を主導する構造へと転換した。これとともに、事業規模を段階的に縮小し、第1段階として年産800万〜1,000万トン規模から推進する方案が議論されている。

米国のトランプ政権は2025年、エネルギー優先順位に関する大統領令を通じて、アラスカLNGをはじめとするアラスカの資源開発を積極的に支援する立場を明らかにし、連邦レベルでの許認可・金融支援の可能性が高まった。あわせて、韓国、日本、台湾などアジアの購入者との長期契約交渉が進行中であり、エネルギー安全保障と供給源の多元化を狙う東北アジア諸国の関心が高い。一方、アラスカ州内ではクック入江(Cook Inlet)ガス田の枯渇による冬季の発電・暖房用ガス不足問題が現実化するなか、大規模な輸出用プロジェクトと州内へのガス供給をいかに両立させるかをめぐる議論も続いている。

関連トピック

  • [[LNG]]
  • [[天然ガス]]
  • [[アラスカ]]
  • [[エネルギー安全保障]]
  • [[韓国ガス公社]]