ディープシーク
概要
ディープシーク(DeepSeek)は、2023年7月に中国浙江省杭州市で設立された人工知能研究企業であり、同時に同社が公開した大規模言語モデル(LLM)シリーズの名称でもある。設立者は広東省出身の梁文锋(량원펑)で、彼はクオンツヘッジファンドであるハイフライヤー(High-Flyer)の創業者でもある。ディープシークは、オープンソース陣営において商用最高峰モデルに迫る性能を極めて低い学習コストで達成し、2025年初頭に世界のAI産業の勢力図を揺るがした代表的事例として評価されている。
主な内容
設立背景と親会社
ディープシークは、ハイフライヤー・キャピタルのAI研究組織から始まった。梁文锋は2021年頃から大規模なGPUクラスターを確保しており、クオンツトレーディングで蓄積した資本とインフラを基盤に、2023年にディープシークを独立法人として分離した。これは一般的なベンチャーキャピタルからの投資誘致モデルとは異なり、自己資金と自社のコンピューティング資源で研究を行う独特な構造である。
主なモデルの系譜
- DeepSeek LLM(2023年11月):初の公開モデルで、67Bパラメータ規模。中国語と英語の性能をバランスよく狙った。
- DeepSeek-V2(2024年5月):MoE(Mixture of Experts)構造とMLA(Multi-head Latent Attention)を導入し、推論コストを大幅に低減した。この頃から「コスパ」のイメージが定着した。
- DeepSeek-V3(2024年12月):総671Bパラメータ、トークンあたりの活性パラメータ約37BのMoEモデル。学習に約278万8000GPU時間(H800基準)を要したと明らかにし、業界の通念の10分の1水準のコストとして注目を集めた。
- DeepSeek-R1(2025年1月):強化学習ベースの推論(reasoning)モデル。数学・コーディング・論理分野でOpenAI o1級の性能を主張し、公開直後に話題となった。その後、R1-Zero、蒸留(distill)版など派生モデルが多数公開された。
技術的特徴
ディープシークの核心的な技術的差別化点は効率性にある。MoEアーキテクチャにより推論時には一部のエキスパートレイヤーのみを活性化し、MLAでKVキャッシュの使用量を削減した。また、FP8混合精度学習、マルチトークン予測(MTP)などを適用し、学習・推論コストを同時に削減した。R1系は、別途の大規模教師あり学習データなしに、純粋な強化学習のみで推論能力を引き上げるGRPO(Group Relative Policy Optimization)手法を用いたとされている。
オープンソース戦略とエコシステム
ディープシークはモデルの重みをMITライセンスで公開するなど、商用利用を広く許可した。これにより、グローバルクラウド事業者(AWS、Azure、NVIDIA NIMなど)や国内外の企業が自社プラットフォームにディープシークのモデルを搭載し、小規模企業も自社サーバーでファインチューニングできる環境が整えられた。
最新動向
2025年1月、ディープシークのアプリが米国AppleのApp Store無料アプリ1位になると、NVIDIAの株価が一日で約17%急落する「ディープシーク・ショック」が発生した。これは、フロンティアモデルの開発には莫大な資本が不可欠だという通念に疑問を投げかけた出来事である。その後、ディープシークはV3とR1の後続バージョン(V3-0324、R1-0528など)を相次いで公開し、性能を改善した。2025年には各国の規制当局がデータセキュリティ・個人情報の問題を提起し、一部の公共機関や企業がディープシークの使用を制限する動きも現れた。同時に、オープンソース陣営ではディープシークのアーキテクチャを参照した派生モデルが多数登場し、低コスト・高効率モデルの競争が加速している。韓国国内でも、通信事業者・ポータル・スタートアップがディープシークのモデルを自社サービスに統合したり、韓国語性能を強化したファインチューニングモデルを発表する事例が増えている。
関連トピック
- [[大規模言語モデル]]
- [[オープンソースAI]]
- [[強化学習]]
- [[NVIDIA]]
- [[AI半導体]]
- [[中国IT産業]]