ハマス
概要
ハマス(حماس, Hamas)は「イスラム抵抗運動」(Harakat al-Muqawama al-Islamiyya)の略称で、1987年の第1次インティファーダ時に創設されたパレスチナ・イスラム主義の政治・軍事組織である。ガザ地区を拠点とし、イスラエルの占領に対する武力抵抗とイスラム法に基づく社会福祉事業を並行して行う。2006年のパレスチナ総選挙で勝利した後、2007年からガザ地区を実質的に統治しており、国際的には多くの国でテロ組織に指定されている。
主要な内容
創設の背景とイデオロギー
ハマスはムスリム同胞団パレスチナ支部から派生した。創設者のシェイク・アフマド・ヤシンは、イスラエル占領に対する非暴力抵抗の限界を感じ、武力闘争路線を採用した。ハマスの憲章(1988年)は、パレスチナ全土を「イスラム・ワクフ(神聖な信託)」と規定し、武力闘争による解放を主張する。2017年に発表された新政策文書では、1967年の境界線に基づく暫定国家樹立を受け入れるなど、一部実用的な立場を示したが、イスラエルの存在そのものを認めてはいない。
政治構造と軍事組織
ハマスは政治局(Political Bureau)と軍事部門であるアルカッサム旅団(Izz ad-Din al-Qassam Brigades)に二元化されている。政治局はドーハ(カタール)に本部を置き、外交・資金調達を担当し、ガザ地区内の行政機関はイスマイル・ハニヤ(2024年暗殺)の後、ヤヒヤ・シンワルが指導した。アルカッサム旅団はロケット攻撃、トンネル戦術、対戦車兵器の運用に特化しており、2023年10月7日の「アルアクサ洪水」作戦を主導した。
ガザ地区統治と社会サービス
ハマスはガザ地区で警察、裁判所、教育、医療などの行政機能を果たす。独自の税金を徴収し、イスラム慈善団体を通じて貧民救済、学校運営、モスク建設などを支援する。これらの社会福祉ネットワークは住民の間で一部の支持基盤を形成したが、腐敗や独裁的統治への批判も存在する。2007年以降、イスラエルとエジプトの封鎖により経済は極度に脆弱化し、失業率は50%に迫る。
国際関係とテロ指定
アメリカ、欧州連合、イスラエル、日本などはハマスをテロ組織に指定した。一方、イラン、カタール、トルコなどは政治的・財政的支援を提供する。イランは軍事訓練とロケット技術を支援し、カタールはガザ地区開発基金を通じてハマス行政機関に資金を提供している。2023年の戦争以降、国際社会の圧力が強まったが、ハマスは依然としてパレスチナ抵抗の象徴として残っている。
主要な武力衝突
ハマスはイスラエルと複数回の戦争を戦った:2008-09年の「キャスト・リード」、2012年の「ピラー・オブ・ディフェンス」、2014年の「プロテクティブ・エッジ」、2021年の「ガーディアン・オブ・ザ・ウォール」、そして2023年10月7日の大規模奇襲攻撃で始まった戦争。2023年の攻撃は民間人1,200人死亡、250人人質拉致を引き起こし、イスラエルのガザ地区大規模空爆と地上戦につながり、2025年現在までに4万人以上のパレスチナ人死亡者が発生した。
最新動向
2024-2025年時点で、ハマスは2023年の戦争以降、軍事的能力が大幅に弱体化した。アルカッサム旅団の指揮系統が崩壊し、トンネル網の60%以上が破壊されたと推定される。政治指導部は2024年7月のイスマイル・ハニヤ暗殺、10月のヤヒヤ・シンワル死亡など、相次ぐ打撃を受けた。しかしハマスは依然としてガザ地区の一部地域でゲリラ戦を継続し、人質交渉と停戦仲介(カタール・エジプト主導)は難航している。2025年1月現在、ハマスは「抵抗の枢軸」(イラン、ヒズボラ、フーシ派)との連帯を強化し、政治的生存を模索中である。国際司法裁判所(ICJ)と国際刑事裁判所(ICC)はイスラエルとハマス双方の戦争犯罪容疑を調査している。
関連項目
- [[パレスチナ]]
- [[ガザ地区]]
- [[イスラエル・パレスチナ紛争]]
- [[アルカッサム旅団]]
- [[イスマイル・ハニヤ]]
- [[2023年イスラエル・ハマス戦争]]
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