天然ガス

天然ガスの特性、生産、用途、環境への影響と最新動向を扱うウィキ記事。

天然ガス

概要

天然ガス(natural gas)は、地下の地層に埋蔵された炭化水素ガスで、主にメタン(CH4)から構成されている。石炭、石油とともに化石燃料の一つで、燃焼時の二酸化炭素排出量が比較的少ないことから「クリーン燃料」とも呼ばれる。世界のエネルギーミックスにおいて重要な割合を占め、暖房、発電、産業原料など様々な分野で使用される。

主な内容

特性と組成

天然ガスの主成分はメタンであり、エタン、プロパン、ブタンなどの中質炭化水素や窒素、二酸化炭素、硫化水素などが少量含まれる。無色無臭で漏洩時に危険なため、商用ガスには臭いのある添加剤(メルカプタン)を加える。空気より軽く、爆発限界が狭いため比較的安全な部類だが、密閉空間では窒息の危険がある。発熱量は1m³あたり約10,000~11,000kcalで、LNG(液化天然ガス)の場合は体積あたりのエネルギー密度が高い。

発見と生産

天然ガスは主に油田(oil field)やガス田(gas field)で産出される。地層内部の高い圧力により、掘削するだけで自然噴出するか、ポンプで採掘する。近年では、シェールガスのように岩石内に閉じ込められたガスを水圧破砕法(fracking)で生産するケースも増えている。主要生産国は米国、ロシア、イラン、カタール、中国などである。埋蔵量は継続的に発見されており、非在来型ガスの埋蔵量まで含めると、今後数十年間使用できる量と推定される。

貯蔵と輸送

天然ガスは気体の状態でパイプライン輸送されるか、液化してLNG運搬船で輸送される。パイプラインは主に大陸内輸送に適しており、大陸間輸送や海上輸送には-162°Cに冷却して体積を1/600に減らしたLNGを使用する。LNGは断熱タンクに貯蔵され、運搬船は特別に設計されたメンブレンタンクを備えている。貯蔵施設としては地下岩塩層や冷凍タンクなどが使用される。近年では浮体式LNG生産・貯蔵・積降設備(FLNG)も商業化されている。

用途

天然ガスは発電用、都市ガス用、産業用、輸送用など多方面で使われる。電力生産ではガスタービン複合発電が効率が高く二酸化炭素排出が少ないため、化石燃料の中で最も環境に優しい。都市ガスとしては暖房、調理、給湯などに使用され、産業では鉄鋼、ガラス、セラミックスなどの熱処理工程の燃料として活用される。また、水素を製造する改質工程の原料としても重要であり、アンモニア・肥料の生産にも不可欠である。輸送分野ではCNG(圧縮天然ガス)やLNG燃料車両が一部で使用されている。

環境影響

天然ガスは石炭や石油より燃焼時の二酸化炭素排出量が25~40%少なく、微小粒子状物質や硫黄酸化物の排出がほとんどない。しかし、メタン自体の温室効果は二酸化炭素の28~36倍に達するため、パイプラインの漏洩や採掘過程での放出が重要な問題となっている。水圧破砕工程では地下水汚染や誘発地震の可能性も議論となる。したがって、天然ガスは気候変動対策の観点から「橋渡し燃料」に分類されるが、長期的には低炭素エネルギーシステムへの転換が求められる。

価格と市場

国際ガス価格は原油価格と連動し、主な指標としては米国のHenry Hub、英国のNBP(または欧州TTF)、日本のLNG CIFなどがある。市場構造はパイプライン輸出が多く、過去には地域別の価格差が大きかったが、LNG需要の増加と取引の柔軟性拡大によりグローバルLNG市場が形成され、価格連動性が高まっている。ロシアのウクライナ侵攻などの地政学的危機によりガス価格が急変する事態が発生し、エネルギー安全保障と価格安定化の重要性が増している。

最新動向

2024~2025年時点で天然ガス市場は、ロシア産パイプラインガスの減少と欧州のLNG輸入拡大により再編された。米国は最大のLNG輸出国に浮上し、カタールとオーストラリアも大規模な増設を推進している。中国は発電所と産業用需要を中心に輸入を増やしている。一方、パリ協定の履行とカーボンニュートラル目標により、長期的にガス需要が減少するとの見通しもある。再生可能エネルギーが拡大する中で、ガスは変動性の電力需給を補完するバックアップ電源としての役割が強調される。水素経済と連携し、低炭素水素生産のブリッジ役割も注目される。メタン漏洩削減のため、衛星監視技術や国際メタン誓約(Global Methane Pledge)などの規制手段が強化されている。

関連項目

  • [[石油]]
  • [[液化天然ガス]]
  • [[シェールガス]]
  • [[エネルギー転換]]
  • [[水素エネルギー]]