GDP
概要
GDP(国内総生産)は、一定期間(通常1年)に一国の領域内で生産されたすべての最終財・サービスの市場価値の合計である。経済活動の規模と成長率を測る最も代表的な指標として用いられる。GDPは、消費、投資、政府支出、純輸出の合計としても計算できる。
主要な内容
GDPの定義と歴史
GDPの概念は、1934年にサイモン・クズネッツが米国商務省に提出した報告書で初めて体系的に整理された。その後、1944年のブレトンウッズ体制で各国の経済規模比較の基準として採用され、国際的に標準化された。現在では世界銀行やIMFなどの国際機関が各国のGDPを算出・発表している。
GDPの計算方法
GDPは大きく3つのアプローチで計算できる。第一に、生産アプローチは各産業の付加価値を合算する。第二に、支出アプローチは一国の総需要を表す消費(C)、投資(I)、政府支出(G)、純輸出(X-M)を合算する。第三に、所得アプローチは生産過程で発生した賃金、利子、利潤、地代などのすべての所得を合算する。理論上はこれらの3つの方法は同じ結果を生むが、実際の統計作成では各国のデータ収集事情によって差が生じることがある。
名目GDPと実質GDP
名目GDPは現在の市場価格で計算されたもので、物価変動が反映された数値である。実質GDPは基準年の価格に換算したもので、物価変動の影響を除いて実際の生産量の変化を反映する。経済成長率は通常、実質GDPの増加率で測られる。GDPデフレーターは名目GDPを実質GDPで割った値で物価水準を表す。
一人当たりGDP
一人当たりGDPは総GDPを人口数で割った値で、一国の平均的な経済水準を比較する際に有用である。国家間の生活水準を比較する際は購買力平価(PPP)レートを適用した一人当たりGDPも用いられる。ただし、所得分配の不平等を反映しない限界があるため、実際の生活水準を補完するためにジニ係数や人間開発指数(HDI)などと併用されることもある。
GDPの限界
GDPは経済活動の規模を測るには有用だが、いくつかの限界を持つ。第一に、非市場経済活動(家事労働、ボランティアなど)は除外される。第二に、所得分配や不平等を反映できない。第三に、環境破壊や資源枯渇のような負の外部効果をプラスの経済活動として計算しうる。第四に、海外で発生した国民の所得は除外される(GNPとの違い)。第五に、地下経済や違法活動は統計に捕捉されないことが多い。こうした限界により、近年はGPI(真の進歩指標)や幸福度指数などの代替指標が提案されている。
GDP関連概念
- 国民総所得(GNI): GDPに海外からの純要素所得を加えた概念で、国民ベースの所得を表す。
- 国内純生産(NDP): GDPから資本減耗を差し引いた純粋な生産価値である。
- 潜在GDP: すべての生産要素が完全雇用されたときに達成可能な最大の生産水準を意味する。
最近の動向
2024~2025年には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック後に世界経済は回復基調を見せたが、ロシア・ウクライナ戦争、中東紛争などの地政学リスク、主要国中央銀行の金融引き締め政策、インフレ圧力などがGDP成長に影響を与えている。IMFは2024年の世界GDP成長率を3.2%、2025年には3.3%と予測した。米国は堅調な消費と労働市場に支えられ、2024年の成長率は2.8%を記録する見込みである。中国は不動産危機と内需不振の中で4.8%程度の成長が予想される。ユーロ圏はエネルギー価格の安定と製造業の回復にもかかわらず、低成長が続く見通しである。韓国は輸出好調にもかかわらず、内需低迷により2024年の成長率が2%前後に低くなるとみられる。また、主要国はGDPの限界を補うため、半導体・AIなどの先端産業育成とカーボンニュートラル政策を同時に推進しながら、持続可能な成長を模索している。
関連項目
- [[経済成長]]
- [[国民所得]]
- [[名目GDP]]
- [[購買力平価]]
- [[景気循環]]